うつ回復 認知行動療法
認知行動療法について
1)はじめに
認知行動療法は投薬療法以外の方法としても効果があります
よく誤解している人がいますが、認知行動療法は「ポジティブ思考になれ」というものではありません
「ネガティブ思考」も含めて、偏った思考パターンを広げることで、ストレス耐性を向上させる療法です
コラム法という手法を用いて、自分の思考を整理します
■認知行動療法を行う条件
・思考力がある程度回復していること
認知行動療法は思考の幅を広げる療法です
うつ症状は思考力の低下を伴うことが多いため、思考力がないと成果がでません
◆自分の事例
リワークを始めた頃は、周りの人とうまく会話できませんでした
まだ思考力が伴っていなかったと思います
リワーク2週間目頃から徐々に思考力が向上してきたと感じました
この頃に認知行動療法を始めました
・ストレス耐性がある程度回復していること
ストレスを受けた場面を詳しく思い出す必要があります
そのときを再現して、気持ちを感じるために、同じストレスを受けます
このストレスに耐えられるくらいの回復が必要です
焦って行うとストレス場面を思い出したことにより、うつ症状が悪化するおそれがあります
◆自分の事例
コラム法シートを作成するときに、職場のストレス場面を思い出すと、胃がキリキリ痛んだり、ビクッとした恐怖感がわいてきました
まだストレス耐性が弱い、と感じました
しかし思考パターンを広げたことで、若干ストレス耐性が向上できたと感じました
2)認知の仕組み
■認知の流れ
出来事 > 認知 > 感情 > 行動
■認知のゆがみ
認知から感情、行動にゆがみがあると、無意識にストレスに感じてしまいます
例)
「挨拶したのに、返事をしてくれなかった」
・ゆがんだ認知
「無視された」
「自分のことを嫌いなのだ」
・ゆがみのない認知
「聞こえなかったのかな?」
「忙しいのかもしれない」
「体調が悪いのかもしれない」
■自動思考
過去のいやな経験や思考(トラウマ)が、マイナス思考を生み出してしまいます
これは自動思考によるものです
・自分のことをマイナスに評価してしまう
「どうせ自分はダメな人間だ」
・相手との関係をよくないと思ってしまう
「きっと自分を相手にしてくれない」
・将来のことを悲観的に考えてしまう
「また失敗してしまうだろう」
■行動、身体症状への影響
自動思考のゆがみにより、自分の行動や身体症状が悪化します
・行動
困難に立ち向かえない
ストレスから逃げたくなる
怒りをぶつける
など
・身体症状
緊張する
不安になる
いらいらする
など
■思考の幅を広げる
認知行動療法はマイナス思考をプラス思考に変えるものではありません
思考の幅を広げることで、余計なストレスを感じにくくするものです
3)テクニック
・コラム法
認知、感情、行動を列挙して、ストレスにならない行動に変える手法です
「出来事」
自分がストレスに感じる場面を列挙します
できるだけ具体的に表します
○正しい例
上司が自分の業務について「遅れているけど、大丈夫か?」と言った
×悪い例
上司が自分の業務が遅れていることを注意した
※「注意した」は主観が入っています
事実かどうかは上司しかわかりません
「認知」
自分が出来事に対して、どう行動したかの事実を列挙します
○正しい例
一瞬、体が硬直した
※具体的な事実を表しています
×悪い例
怒られた
※「怒った」のは事実ではなく、上司しかわかりません
「感情」
自分がどう感じたかを、気持ちの分類毎にパーセンテージで表します
◆気持ちの分類
ゆううつ、不安、怒り、罪悪感、恥ずかしい
悲しい、おびえ、苛立ち、パニック、不安
心配、興奮、傷ついた、うんざり、落胆
神経質、こわい、屈辱感、無力感
激怒、焦り、失望、みじめ、困惑
※これ以外にも自分で追加してもかまいません
○例
罪悪感 80%
おびえ 70%
落胆 50%
「考え方の根拠」
なぜそのような感情になったのかの根拠を具体的に列挙します
○例
罪悪感 「自分のミスだと思った」
おびえ 「上司は自分の事を怒っている」
落胆 「また同じミスをしてしまった」
「考え方の反証」
自分の考え方に対して、他の考え方を列挙します
・もう一度冷静になって考えなおしてみる
・これまでの経験を踏まえて考えなおしてみる
・第三者の立場で考えてみる
○例
「上司はいつも部下の仕事をよくみている」
「仕事の遅れは早めにフォローしたほうがいい」
「最近顔色が悪かったり、言葉が少ない」
「合理的思考」
根拠と反証をつなげてみます
その結果、別の思考もないか、列挙してみます
○例
「上司は自分のことを心配してくれている」
「体調が悪いと思っているのかもしれない」
「心の変化」
合理的思考も含めた感情を踏まえて、もう一度心の変化をパーセンテージで表します
○例
罪悪感 80% >60%
おびえ 70% >20%
落胆 50% >40%
4)思考パターンの改善
・継続して行う
コラム法による自動思考の反証を継続して行います
最初はコラム法シートを使って行います
慣れてきたら、自分の頭の中だけで考えていきます
・うまくいかないとき
・出来事を具体的に書き出せているか?
事実の見落としがないか、思い出してみます
・自分が気がついていない気持ちが隠れてないか?
自分が触れたくない気持ち(トラウマ)があるかもしれません
・他の人ならどう考えるか、と考えてみては?
知り合い以外にも、ドラマや映画の登場人物でもかまいません
・考えがうまく出ないとき
まだ認知行動療法をできる回復状況ではないのかもしれません
焦りや投薬治療の不安から認知行動療法を行っても、回復状況が伴っていなければ成果はでません。
もう一度リハビリを続けてみましょう